AOINOUE

入院して毎夜うなされ苦しむ妻・葵のもとへ、美貌の夫・若林光が見舞いに訪れた。看護婦によると毎晩見舞いに来るブルジョア風の女がいるという。光が病室にいると、和服姿に黒い手袋をつけた六条康子が現れた。光と康子はかつて恋仲であった。毎夜、葵を苦しめていたのは嫉妬心に駆られた六条康子の生霊であった。康子(生霊)は光の気持ちを自分のほうへ向けようとする。

病室に、かつて2人で乗った湖上のヨットが現われ、康子は幸福だった昔の思い出を語り出す。その不思議な魔力によって、一瞬、妻の葵のことを忘れそうになった光だったが、葵のうめき声で我にかえり、康子の愛を拒絶する。康子は消えていった。

病室の光はふと思いついて、六条康子の家に電話をかけた。康子(生身)は電話に出て、ずっと家で寝ていたと言う。その時、病室のドアの外から、さっきの康子(生霊)が、忘れた黒手袋をとって頂戴と光に声をかけた。受話器をそのままにして光は病室から出て行った。そして受話器から康子(生身)の、「何の用なの?
もしもし、光さん、もしもし」という声が響く中、突然、葵が苦しみ出し床の上に転がり落ちて死ぬ。

「近代能楽集」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2020年11月25日 (水) 14:50 UTC

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